
こんにちは、山キャン情報室 管理人の亀太郎です。
誰でも知っている世界最高峰の標高8840mのエベレスト(エベレストは英語、中国語ではチョモランマ、ネパール語ではサマルガータ)。
3000m級の北アルプスでも、酸素が薄くて頭がクラクラするのに、8000mとか想像もつきませんよね。
最近は酸素ボンベを背負って登るのが一般的ですが、ここでは、「エベレストのデスゾーンと酸素ボンベ」に絞って、調査した結果を紹介します。
酸素との格闘の歴史には、なんと、酸素ボンベの軽量化があったようです。
- この記事を書いている人
登山歴:2007年~キャンプ歴:1995年~ - 九州の大学卒業後、愛知県の自動車会社で車体構造の研究に従事する傍ら、1995年からデスクワークのストレス解消にオートキャンプを始める。
2007年からは、「山頂でテント泊をしたい」との単純な発想から、登山を独学で学び(一時期、山岳会に所属)、今はソロテント泊主体に活動中。
そんな経験もふまえ、大手メディアでは取り扱っていないノウハウや小ネタ情報を発信しています。
エベレスト登頂には酸素ボンベの軽量化が関わっていた

エベレストの人類初登頂は1953年のヒラリー。
それ以来2000年までは年間平均25名の登頂がされることになるが、2000年から登頂者が一気に増えて2017年までの統計では、その16倍となる年間415名が登頂している。
累積で調べると、2018年3月現在で、エベレストの登頂回数は65年前の人類初登頂から8,306回を数えているそうです。
なぜ、そんなに爆発的に登頂者が増えたのか、エベレスト登頂の歴史を探ってみました。
①ヒラリーは軽量な酸素ボンベで人類初の栄冠に

1952 年にスイス隊が中国のチベット侵攻の影響で,南面ネパールからのルートから試みたが,不完全な酸素ボンベが原因で,8550mで敗退。
そこで翌年の1953年に、イギリスのジョージ・ハントが軽くて耐久力のある酸素ボンベを開発。
そのボンベを有効に活用したヒラリーとテンジンが人類初のエベレスト登頂に成功。
エベレスト初登頂には酸素ボンベの軽量化が背景にあるとはビックリです。
②酸素ボンベなしの無酸素登頂にメスナーが成功

ヒラリーが登頂した後、ヒマラヤ8,000m級での酸素ボンベは常識となり,1970年日本山岳会のエベレスト登頂でも,完成度の高い酸素ボンベが平林克敏隊員によって開発され,植村直己隊員らが登頂に成功。
ただ,酸素補給無しで無酸素登頂は世界の登山家の夢。
その中で、1978年にライホルト・メスナーが人類初のエベレスト無酸素補給登頂に成功。
人類はどこまで貪欲なのかって感じですね。
③酸素ボンベの軽量化が爆発的にエベレスト登頂者を増やすことになる

2000年ごろからエベレストでは、シェルパなどによるガイド登山が始まる。
特に、1989年の冷戦終結の影響で,軍用機に搭載されていたソ連製の超軽量酸素ボンベが市場に出まわるように。
現在(2014年)は、ほとんどのエベレスト登山隊がロシア“POISK”社製造の酸素ボンベを使用。
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そのボンベは容量 4L で重量 3.5kgで、先ほど紹介した1970 年日本山岳会エベレスト隊が使用していたものと比べて、約半分の軽量化が図れているらしいです。
年間415名もの登山者がエベレストに登れる背景にも軽量化が絡んでいたなんて、またまた、ビックリでした。
ただ、エベレストには無くてはならない酸素ボンベ、信じられませんが、行動途中の盗難事件も多発してるそうです。
我々の備品からまた酸素ボンベが7本なくなった。
酸素ボンベが消えてなくなったと遠征隊から繰り返し聞いたが、命にかかわる問題だ。
背負っていた分を登山中に使い切ってしまったがまだ頂上にたどり着いていない場合や、下山時のために取っておいたものがなくなってしまった場合は、特にそうだ。
以上、人類の酸素ボンベとの格闘の歴史について紹介しましたが、いったい、登頂までにどれぐらいの酸素ボンベを使うのか調べてみました。
エベレスト登頂までにどれぐらいの酸素ボンベを使うのか?
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エベレスト山頂の酸素濃度は平地と比較してわずか3分の1。
酸素ボンベなしで登頂を試みる人はごくわずかで、これまで登頂を達成した人々の97.5%が酸素ボンベを使っているそう。
酸素ボンベ1本あたり4Lの酸素が入っているが、使用ペースは人それぞれだが、ボンベの寿命は最大5時間。
個人差にもよるが、エベレスト登頂に使う本数は、登山者一人当たり平均7本。
3.5kg/本×7本=25kg。
なんと、一人当たり25kgの酸素ボンベを荷揚げしないと頂上に立てない計算になります。
なんか、気が遠くなりそうな(笑)。
では、酸素ボンベがなかったら、人間ってどうなるんでしょう?
エベレストの「デスゾーン」で酸素ボンベが空になったら意識を失う?

エベレストで有名な「デスゾーン」。
上の写真にある登山経路の最上部です。
「デスゾーン」は標高8000メートルを超えた地点を指し、空気が極端に薄く、酸素濃度は地上の3分の1程度。
エベレストでは「第4キャンプ(C4、7900m地点)」から山頂までは深夜に出発し、その日のうちに下山するのが一般的ですが、持ち運べる酸素ボンベの量には限界があり、仮に渋滞で計画に遅れが出ることも。
ベースキャンプに入るまでに高所順応をしているので,切れた瞬間に意識を失うということはないが,低酸素血症に陥る可能性は大。
今いるところより500m~1000mだけ標高の高いところに行き、数時間滞在、戻るだけ。次は高いところの滞在時間を長くしてまた戻る。さらにその次はそこで一泊して戻る。というように標高の高い場所に行き戻るを繰り返し、次第にその時間を長くしていくもの。
さらに、持ち運べる酸素ボンベに限界があるため、供給する酸素量を制限しており、酸素濃度は海抜7,000m程度。
この結果、多くの登山者が高地脳浮腫に悩まされ、不明瞭な発話や意識の混乱、運動協調性の低下、幻覚、意思決定力の低下などに苦しんでるらしいです。
三浦雄一郎さんが、エベレストの頂上で酸素ボンベを手放して、意識を失わずにカメラに向かい何十秒もコメントをしてたシーンがあり、登山者の中で話題になった事があります。
これは、息子の豪太さんによると、三浦雄一郎さんはHO-1の血中濃度が高いということも一因だそうで、登山前から実証していたとのこと。
HO-1は低酸素にさらされた時に血管を拡張するものらしく、他のエベレスト登頂経験者でもHO-1の血中濃度が遠征前から高いらしいです。
鍛えたものか、持って生まれたものかはわかりませんが、超人だという事には変わりないようですね。
まとめ
以上、「エベレストのデスゾーンと酸素ボンベ」に絞って、調査した結果を紹介しましたが、いかがでしたか?
酸素との格闘の歴史には、なんと、酸素ボンベの軽量化が絡んでいるとは思いもしませんでした。
テクノロジーだけでは語れないほど過酷な登山だとは思いますが、皆さんの今後の登山の参考になれば幸いです。
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