
こんにちは、山キャン情報室 管理人の亀太郎です。
誰でも一度は耳にしたことのある「そこに山があるから」。
イギリスの伝説的登山家マロリーの残した名言ですが、男女にかかわらずロマンを感じますよね~
でも、その言葉の本当の意味って、意外に知られていません。
ここでは、「そこに山があるから」を英語でいうと、マロリーの名言の元ネタが分かってくるので紹介します。
- この記事を書いている人
登山歴:2007年~キャンプ歴:1995年~ - 九州の大学卒業後、愛知県の自動車会社で車体構造の研究に従事する傍ら、1995年からデスクワークのストレス解消にオートキャンプを始める。
2007年からは、「山頂でテント泊をしたい」との単純な発想から、登山を独学で学び(一時期、山岳会に所属)、今はソロテント泊主体に活動中。
そんな経験もふまえ、大手メディアでは取り扱っていないノウハウや小ネタ情報を発信しています。
「そこに山があるから」の元ネタは英語で「Because it’s there」

この名言を言った人はジョージ・マロリー(イギリスの伝説的登山家)

ジョージ・マロリーはイギリスの伝説的登山家。
1886年生まれで、当時未踏峰だったエベレストに挑戦し、1924年の3度目の挑戦の際に、頂上付近の北壁で行方不明に。
亡くなる1年前に、この名言を残しています。
マロリーの詳細は後述しますが、先ずは、名言がどうやって生まれたか見てみましょう。
名言の始まりは1923年3月18日付けのニューヨーク・タイムズの記事から

この言葉は、1923年3月18日付けのニューヨーク・タイムズのマロニーへのインタビュー記事から始まります。
何度もエベレストに挑戦するマロリーに記者が質問。
- 記者「Why did you want to climb Mount Everest?」
- マロリー「Because it’s there.」
日本語に直訳すると
- 記者「なぜ、あなたはエベレストに登りたかったのか?」
- マロリー「なぜならば、そこにそれがあるから」
っとなりますが、「それ」の「it」って何でしょう?
その解釈の仕方で意味が全く変わってきます。
元ネタの解釈1:「Because it‘s there」の「it」は「エベレスト」

「なぜ、あなたはエベレストに登りたかったのか?」との質問に答えたので、「Because it‘s there」の「it」は「エベレスト」と考えるのが妥当。
そう考えると、こんな会話だったと予想されます。
- 記者「なぜ、あなたはエベレストに登りたかったのか?」
- マロリー「そこにエベレストがあるから」
ん?
マロリーは、単純に「当時は人類未踏峰だったエベレストだから登りたかっただけ」なの?
元ネタの解釈2:「Because it‘s there」の「it」は「山」

「Because it‘s there」の「it」を、抽象的な「山」と解釈してみると、こんな↓感じ。
- 記者「なぜ、あなたはエベレストに登りたかったのか?」
- マロリー「そこに山があるから」
山は、人生と同じ。
目先に捉われず、その山の頂上を目指し、何も考えずに一生懸命のぼればいい。
それが、充実した人生を過ごす秘訣なのだ。
って哲学的な話に解釈も成立する。
では、どっちの解釈が、正しいんだろう?
実際、何十年にわたって解釈論争が続いたようです。
「そこに山があるから」は世紀の大誤訳だともいわれている
現在は「そこにエベレストがあるから」説が優勢
2005年に「そこに山があるから登るという世紀の大誤訳」という表題で発表された論文が出されました。
それを要約するとこんな↓感じです。
- 「そこに山があるから」は日本における世紀の大誤訳のひとつであろう
- 「マロリーが答えたのは、『エベレストに登る理由』であって、単に『山に登る』という一般的行為に対する回答ではない
あらら(;^_^A
当時は誰も登ったことがないエベレストに登りたくなるのは、登山家として当然のことだ… と言っているに過ぎない様です。
歴史に残る名言は誤訳によって生まれることもある
「名言の正体」という論文にはこんな↓風に書かれています。
- 歴史に残る名言は誤訳によって生まれることもある
- マロリーのこの言葉は、その最たる事例と言えるだろう
- エベレストを登る意味を尋ねた記者の質問への回答としても「山」と答えるのは的外れ
マジですか(@_@;)
山男のロマンじゃなかったようですね(笑)。
名言「地球は、青かった」も。。。

1961年、ソ連のガガーリンが、世界で初めて有人宇宙飛行に成功。
宇宙空間の静寂の中、ガガーリンは、地上との交信のマイクを手に取り、「地球は、青かった」と叫んだ。
でも、「地球は、青かった」も宇宙からの交信の言葉ではなく、地球に帰ってきた後のこの↓言葉がデフォルメされたようです。
「地球はまるで、青いヴェールをまとった、花嫁のようだった」
なんと!!!
でも、「そこに山があるから」は名言として解釈したいっ

生前のマロリーを知っている友人も「そこに山があるから」について、書籍で「この言葉は少しもジョージ・マロリーらしい匂いがしない」と書いているようです。
でも、別の書籍にはこんな↓記述も。
- もし彼自身がそれを口にしなかったとしても、この言い回しは、彼という人間とエヴェレストを征服せんとの彼の情熱的な追求を完璧に要約している
- 「そこに山があるから」はマロリーの墓碑銘として永遠に残るだろう
ふむふむ。
何か難しいことをやる時に非常に高い壁があったとしてもそれをやりたくなる。
誰もやったことのないことへの人間の本質的な欲望。
いずれにしろ、「そこに山がある」っていう名言は、色あせることはないと思いますよね~
以上で、「そこに山があるから」論争は終わりますが、そもそもマロニーってどんな人なのか、次に紹介しますね。
そもそも「そこに山があるから」の元ネタを残したマロリーってどんな人?
ジョージ・マロリーはイギリスの伝説的登山家

- 生誕 :1886年6月18日
- 出身地:イングランド
- 死没 :1924年6月8日 or 9日にエベレスト北壁にて37歳で死没
- 職業: 登山家、教師
マロリーとエベレスト
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- 1921年 第1次遠征:ルートは確立はされていないので偵察的な意味合い
- 1922年 第2次遠征:エベレストの登頂を目指し、当時の最高到達地点には到達しましたが、標高8850mには届かず
- (1923年3月18日の記事で「Because it’s there.」という名言を残す)
- 1924年 第3次遠征:頂上付近の北壁で行方不明に
- 1999年 遺体発見
- いくつかの遠征隊が、マロリーは山頂にたどり着いたのか?決め手を得ようと遺体を捜索
- 行方不明になって75年後の遺体が発見されたが、どこまで登ったのかは結論出ず
- 遺体は寒冷な気候下なので驚くほど良く保存されていた
- 遺体の写真もありますが、掲載はやめときます(見たい方は後で紹介する書籍の表紙を見て下さい)
マロリーが挑戦して30年後の1953年5月29日に、同じイギリス隊のメンバーでニュージーランド出身のエドモンド・ヒラリーとシェルパのテンジン・ノルゲイが初登頂し、マロリー以来のイギリスの悲願が達成されたことになります。
そんな伝説的登山家マロリーに関しては様々な書籍がありますので、最後に紹介します。
マロリーに関する書籍の紹介
マロリーの遺体発見に成功した米捜索隊が綴った手記。
人類初のエベレスト無酸素補給登頂を成し遂げたメスナーが、マロリーの足跡をたどりながら、エベレスト初登頂の謎に迫る本。
他にも、こんな本も。
まとめ
以上、「そこに山があるから」を英語でいうと、マロリーの名言の元ネタが分かってくる内容を紹介しましたが、いかがでしたか?
その言葉の本当の意味が分かっても、「そこに山があるから」っていう名言は、色あせることはないと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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